gasonの徒然なるままーに

不惑になるのはいつのひか

ジェイムズ・パタースン - かくれんぼ

これでもかというくらいに、男運や運命そのものに恵まれない物語かと思いきや、そもそもシンデレラストーリーをがしがし昇る主人公マギー。昇りきって「これは夢じゃないかしら」という状況に、「夢なら良かったのに」と後からグチるのは、そりゃあ無しです…

★伊藤計劃 - ハーモニー

etmlのカラクリが読んでいる際の違和感に答えを出してくれた。徹底的に客観的で登場人物の誰の視点でもないような感覚に陥るのはそういう訳か。意志・感情のないハーモニーを投げかける本作と、歩きながらスマートフォンを見てあたかも意志・感情のみあるハ…

★三津田 信三 - 百蛇堂

こんなシリーズの作り方もあるんだなと目から鱗。正直、導入部分を読んだ限りでは、エッセイかなぁ、怖いなんて無縁かなぁと心配になったが、以降恐怖が加速。現実的、非現実的な恐怖が共に押し寄せる様はとても面白く読めた。私が読んだおそろしいものの中…

宮部みゆき - レベル7

記憶喪失グループと失踪グループの話が並行して進んでいくのだが、徐々に並行のバランスが悪くなっていって、まとまりのないまま解決してしまったという印象。ボリュームがあるため、最後まで緊張感をもって読みたかったなぁ。そしてタイトルは内容に際して…

黒川博行 - 繚乱

これだけ悪どい人間が集まりながら、誰一人として憎む対象がいない、それほどに物語そのものが痛快。暴力と権力とちょいと知恵が入り乱れてかち合う。街の描写は細かく、度々出てくるメシを食うシーンが妙にうらやましい。

★太宰治 - 人間失格

2015/08/05人間を信じることが恐ろしくて、お道化続けてみる中で、いくつか人に信頼を寄せると尽く絶望的な出来事に苛まれる。お道化を深めるための酒、女、タバコ、薬が唯一、ふざけないといけない恐怖を消してくれる。今の時代もそうなのかもなぁ。人が自…

長尾剛 - 死ぬまでに一度は読んでおきたい ギリシャ神話入門

初ギリシャ神話本。神話に関して読むのに、時系列に沿っているものか、登場する神ごとに展開されるものか、どちらが読みやすいか迷った。本著は神ごとに物語が展開される本。とても読みやすかった。いかに神々が嫉妬深くて浮気性でドロドロしているか、そし…

新堂冬樹 - ブラック・ローズ

非常に徹するのか情にほだされるのか、どうも曖昧な主人公。復讐を遂げるためなら悪魔にだってなれる、というのに恋人との蜜月を思い出してほだされるのは、人間味があるというよりは矛盾の塊といった感じ。主人公が暴走→主人公の部下が幻滅、という図式の多…

三津田 信三 - 蛇棺葬

恐怖の対象が明確でない恐怖。何に追われているのか分からなく、暗闇の中を這うように逃げる場面がとても怖い。舞台には日本固有の歴史観や風土があり、その排他的で呪術的な雰囲気が、恐怖に一層(妙な表現だが)華を添えているように思う。ただ少し冗長な…

秋山 瑞人 - 猫の地球儀 焔の章

[焔の章、幽の章を合わせて] 写実的ファンタジー。猫が猫の世界のルールに則って最強を目指したり、地球を目指したり。それぞれの夢を追う物語。共通するのが、夢追いの過程でかならず周囲に犠牲を伴うこと。そのため批判はあるし、悲しみが苦しませるし。だ…

森博嗣 - 数奇にして模型

本作でも犀川先生の冷静な言葉の数々が蝶のように舞い蜂のように刺す。模型をつくることの意義と殺人の動機の結びつけを試みるも、結びつかず。その不条理とも思える状況を的確な言葉で綴り、読み手は動機の不明を受け入れることが出来る。この不条理感は犀…

★高村薫 - 黄金を抱いて飛べ

これでもか、というほどに緻密な描写。これが登場人物像をくっきりと浮き彫りにするため、心理描写がなくても行動の一つ一つの動機づけが自然とみえてくる。作戦決行の場面がむしろ簡潔に描かれているのは、すでに人物像描写が十分であったからだろう。緻密…

桐野夏生 - 東京島

導入が面白いな!これはいいかも!と思ったがちょっと尻つぼみ。それぞれのキャラクターがそれぞれの物語を生きるのは良いが、それに伴う信条変化(周囲/本人)が激し過ぎて、物語がついていっていない感じがする。こういった信条変化をするなら、サスペン…

高橋克彦 - 私の骨

ホラーとしては読んだことのない文体。リアルに怖い話、というより、そもそもリアルの話が実は怖い話だった、のような。このことで、「ウワッ」と驚くのではなくゾワゾワと背筋から怖くなった。恐怖にはどこか救いのおちを求めてしまうが、そのおちこそが、…

アガサ・クリスティー - そして誰もいなくなった

読み進める中で、手にとっている本の厚みが気になる。えっ、あとたったこれだけのページで完結するの?人物描写に不足無いのに、こうも短ページに凝縮されるものなのかと感心。正直な話、ストーリーにおける「告白」はあまり魅力に感じなかった。正体不明の…

湊かなえ - 贖罪

本著では事件がつらなることを連鎖と表しているが、私はスパイラルだと思う。悲しみが人に伝わるとき、それはより深く根付き、次は更に。もし途中で負を止めたいと願うならば、それは伝わった後ではなお難しくなる。結局、この著で贖うべき人はだれだったの…

多島 斗志之 - 神話獣

首尾一貫して実体のない何かに突き動かされる人と、その実体のない恐怖に怯える人のチェイス。使命感、とも呼べるものに突き動かされる様は、浦沢直樹のMONSTERのルンゲ刑事も彷彿とさせる。ただし、本作品での使命感はルンゲ刑事以上の空虚なる結果を当初か…

伊坂幸太郎 - ガソリン生活

一度出会った車との思い出がホロリとくるラストな一作。車目線で語られるとどうしても読書の気持ちがほだされるが、起きている事件はわりとドロドロ。同作者の死神の浮力をはじめとするサイコパスな犯罪者が絡んだりもする。このほんわかとドロドロが妙に心…

★静月 遠火 - R&R

無限にループする一日の中を過ごす男の子、に頼られる女の子、の視点なのが面白い。延々と続くことの中で感じる孤独は、存在の孤独ではなく記憶の孤独。ただ一人だけが今日を上書いて記憶していくが、周囲の人にはリセットされた初めての記憶。一日を脱却し…

丸山夢久 - リングテイルー勝ち戦の君

たまーに入ってくる挿絵が言い得て妙というか目の当たり妙というか。ややもすると絵本のような読みやすい内容が、真剣な登場人物を挿絵が支えて物語る。面白かった。僕は1983年生まれであるが、DQ、FFなRPG脳領域をもつ方には特に入ってくるのでは。叙情的な…

高橋克彦 - ドールズ 闇から招く声

転生をしたらどうなるだろう、私だったら。ここで強くてニューゲームした人物は、我を保った。もちろん、主人公側の目吉さんと犯人の我の保ち方は違う。人生を跨いでの孤独と、跨いでからのカゾクとはえらい違いがある。犯人側が犯人の素質を失うエンドであ…

渡部 淳 - 国際感覚ってなんだろう

今も昔もそうだと思うが、国際感覚は人間と人間の関係に対する感覚と思う。本著にも言及があるが、職場・学校・幼なじみなど人間関係あるところ全ての感覚を、国際感覚に置き換えても大げさでない。それどころか、身近な人間関係を日々みつめることが、いわ…

★三島由紀夫 - 潮騒

美しい文体の中に、ちょっと不思議な感覚。それは男性が女性的に感ぜられたり、女性が男性に感ぜられたりしたことだ。また肉体美に関する表現も相まって、この全体的な印象はなにかに似ている、と思いを巡らせながら解説に至ると腑に落ちた。古代ローマ神話…

伊坂幸太郎 - 死神の浮力

千葉さんが側にいると楽しい。死神なのに、、、読者から見ても不思議だ。しかし思えば、死というものと向き合ってみると、そのぶん人生を濃くしようと必死に生きる。結果楽しくなるものだよな。といって死のことを思って思って思い続けてもやっぱりよく分か…

★星新一 - ようこそ地球さん

星新一を読んでいると、普段読む数百ページで一つの物語とはなんだったのか、と思うことさえある(もちろん、種別の異なる面白味があることは都度おもう)。「処刑」を読むと同著者の「旅のラゴス」(こちらは長編)と表裏の関係に感じられ、ずっしりと重み…

★生田 與克 - 日本一うまい魚の食べ方

優しさにあふれた本。江戸前の口調はさっぱりとしているけれど、その分直接ひびいてくる。「ナメタガレイはズルズルネッチョリしているけど、煮付けるとそこに煮汁が染みて、ゼラチン質でたまんないよっ!」実にうまそう!魚や自然が本当に好きだから、旬を…

太宰治 - 斜陽

貴族の生活はきらびやかである印象があるが、斜陽の中での貴族の生活はどこか薄暗い闇の中にあるかのようだ。スゥプを飲む仕草、それに言及しているのがいかにも貴族なのだが、その描写方法にどこか出口の無い閉塞感を感じる。貴族の持つ陰鬱さが、あるいは…

東野圭吾 - 探偵ガリレオ

面白い。しかし何が面白いかといわれると挙げられない。湯川教授が絶対的存在で、事件発生後に溜めて溜めて現れたら解決するような唯一無二の存在なら、各話が面白いかも。解決に向かうまでがややタンパクなんだよなぁ。面白いという感想が、ドラマ・特に福…

池井戸潤 - ようこそ、わが家へ

ストーカーと会社問題の並行物語。人間の奥底に潜む恐怖が絶妙に表れており、物語に没入した。1つめはネット普及以前、知っている人から受ける恐怖。2つ目はネット普及後、知らないはずなのに知っている世界の常識ややり方を押し付けてくる人からの恐怖。ま…

海堂尊 - ジーン・ワルツ

専門的な知識と小説としてのストーリー性(読みやすさ)とが、絶妙なバランスとなっていて、感心&面白かった。【地方医療 x 官僚】や【女性の理屈抜きの母性 x 理屈上の生死や善悪】の構図が常に心を揺さぶってくる感じ。僕は理屈っぽいところがあるので、…